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西町の家

伝統と現代が響き合う、静謐なる和の邸宅  

 

歴史を重ねた古い町並み。その美しい景観を乱すことなく、むしろ数十年、百年前からそこに存在していたかのように自然に溶け込む佇まいを目指しました。このプロジェクトにおいて最も時間を費やしたのは、素材選びとその「表情」の検討です。ただ和風の素材を使うのではなく、それぞれの素材が持つ歴史的な背景と、年月を経て変化していく「美しさ」を最大限に引き出すことに注力しました。

経年変化を愉しむ、焼き杉の外観

建物の顔となる外壁には、炭化させた表面の層が独特の深みを生む焼き杉を採用しました。焼き杉は、火によって強固な耐久性を得ると同時に、漆黒から徐々に銀灰色へと移ろう、生き生きとした表情を持ちます。この落ち着きある黒の階調が、周囲の家々と柔らかなコントラストを描き、静寂を感じさせる和風の佇まいを実現しました。

五感を満たす、漆喰と杉板の室内空間

一歩室内へ足を踏み入れると、そこには外観の重厚さとは対照的な、柔らかく包み込むような空間が広がります。壁面には、職人の手仕事が光る漆喰を施しました。漆喰が持つ多孔質な質感が、外からの光を優しく拡散させ、部屋の隅々にまで穏やかな明るさを届けます。

足元や天井には豊かな香りを放つ杉板を配しました。杉板の柔らかな足触りは、住まう人に安心感を与え、木の呼吸が室内の湿度を心地よく整えます。素材本来の風合いを大切にしたことで、住むほどに木の色艶は増し、まるで上質な老舗旅館に身を置いているかのような、情緒と落ち着きを感じられる空間となっています。

クラフトマンシップが息づく「造作」の極み

この住まいの最大の特徴は、規格品に頼ることなく、住まいの核となる部分をすべて職人の手による「造作」で仕上げた点にあります。

■造作浴室: 既製品のユニットバスでは決して味わえない、開放感と質感を実現。湯船に浸かりながら木の香りと素材の肌触りを愉しむ、至福のひとときを演出します。

■造作キッチン: 暮らしの動線に完璧に馴染むよう設計。杉板の風合いと調和し、家具のような佇まいで空間に溶け込みます。

■造作建具: 空間の仕切りひとつひとつにもこだわり、光の漏れ方や引き心地を計算。空間全体の統一感を高め、住まいの品格を引き上げます。

細部まで一切の妥協を許さず、じっくりと時間をかけて整えたこの一邸。そこには、慌ただしい日常を忘れさせてくれる「非日常の安らぎ」が満ちています。時を重ねるごとに愛着が深まり、家族の歴史を刻んでいく、真に豊かな住まいが完成しました。

プロジェクトのWORKSレビューアーカイブ記事→こちらから

 

構造:木造1階建
延べ面積:—㎡ (–坪)
家族構成:—

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