この建築の最大の特徴は、敷地条件を最大限に活かすために導き出された「建物の角度」と「境界の設え」にあります。
敷地は東と南の二方向を道路に囲まれた開放的な角地ですが、真南はちょうど南東の角方向に位置しています。一般的な街区に合わせた配置では、一日の限られた時間しか直射日光を採り入れることができません。そこで、建物をあえて敷地に対して斜めにカットする。という選択をしました。
これにより、主要な居室の面が真南を向き、日の出から日没まで、移ろいゆく太陽の光を余すことなく室内に取り込むことが可能となりました。冬場は奥まで暖かな日差しが差し込み、夏場は深い軒や庇が直射日光を遮るという、パッシブな環境設計の基礎がこの「角度」によって形作られています。
角地ゆえの課題である「道路を往来する人々からの視線」に対しては、ダイナミックなコンクリートの打ち放し塀がその解決策となっています。この塀は、単なる境界線ではなく、外部からの視線を物理的にカットするスクリーンとして機能します。
歩行者の目線からは、コンクリートの質感が建物の足元を美しく隠し、住まいのプライバシーを強固に守ります。一方で、室内からはその効果が逆転します。道路上部には構造物がないため、高窓や大きな開口部からは、遮るもののない広大な空の景色が広がります。
今回、塀の裏側に配置した樹木は、その軽やかな葉の重なりがコンクリートの硬質な表情を和らげ、室内からの景色に瑞々しい奥行きを与えています。また、足元の土の部分をあえて植栽で覆い、自然なボリュームを調整することで、建物が持つシャープな造形美を崩すことなく、周囲の環境に溶け込ませる工夫を凝らしました。
「閉じる」ことで「開く」。この相反する要素を、斜めの配置と塀のデザインによって高い次元で融合させた、計算し尽くされた住まいとなっています。
構造:木造2階建
延べ面積:126.86㎡ (38.4坪)
家族構成:夫婦2人・子供1人
2026-01-08