三重県玉城町に佇む「玉城の家」は、総勢6人の大家族が、互いの気配を感じながらもゆとりを持って暮らすための住まいです。この家の中核をなすのは、古き良き日本の知恵と現代のライフスタイルを融合させた「薪ストーブのある土間スペース」です。
多くの家族が集うリビングに隣接して設けられたこの土間は、単なる通路としての機能を越え、多目的な「家の内なる庭」としての役割を担っています。外から帰った際の動線としてはもちろん、雨の日の子どもの遊び場、趣味の道具を手入れするアトリエ、あるいは近隣の方を招き入れる気軽なサロンとして。内と外を緩やかにつなぐこの空間が、大家族の多様な活動を優しく受け止めます。
土間の一角に据えられた薪ストーブは、冬の暮らしの象徴です。揺らぐ炎は家族を自然とリビングへ引き寄せ、言葉を交わさずとも心が通い合うような、穏やかな時間を演出します。リビングの壁面には、独特の風合いと優れた蓄熱性を持つ「大谷石」を採用しました。薪ストーブから放たれる柔らかな熱は大谷石に蓄えられ、室内の温度を一定に保つとともに、空間に重厚さと自然の質感を添えています。素材感豊かな石の壁と木の温もりが調和し、厳しい冬の日でも家全体が包み込まれるような心地よさに満たされます。
家族のコミュニケーションを支えるのは、視界が開けた造作キッチンの配置です。料理をしながらリビングや土間まで見渡せる設計は、常に家族の様子を見守ることができ、自然な会話のきっかけを生み出します。食事の準備すらも家族のイベントの一部となり、賑やかな笑い声が絶えることはありません。
さらに、空間の広がりを感じさせる天井の高さや、季節ごとに移ろう光の入り方にも細心の注意を払いました。吹き抜けから差し込む柔らかな光が、刻一刻と変化する一日の表情を室内に描き出します。開放感溢れる空間でありながら、どこにいても不思議と落ち着けるのは、素材の選択から空間のプロポーションに至るまで、住む人の心に寄り添った設計がなされているからです。
「玉城の家」は、単なる機能的な箱ではありません。薪を割る音、炎が爆ぜる音、キッチンから漂う香りと子どもたちの笑い声。五感を通じて四季の移ろいを感じ、日々の何気ない暮らしを丁寧に、そして贅沢に楽しむための器なのです。この住まいでの時間は、家族の歴史とともに深く、豊かなものへと育っていくことでしょう。
2026-01-08